賃貸の通常損耗とは?学生が負担しなくてよい傷・汚れを具体例で解説

賃貸の通常損耗とは?学生が負担しなくてよい傷・汚れを具体例で解説 原状回復・修繕費

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賃貸物件を退去するとき、学生や保護者の方からよく聞かれるのが、

「普通に生活してできた傷も修理しなければならないの?」

「家具を置いてできた床のへこみは、退去費用に含まれる?」

「壁紙の日焼けや画びょうの穴は、入居者負担になる?」

といった疑問です。

賃貸物件は、どれだけ丁寧に生活していても、時間の経過とともに少しずつ傷んでいきます。

通常の生活をしていて自然に発生した傷や汚れは「通常損耗」と呼ばれ、原則として入居者が修繕費を負担するものではありません。

一方、入居者の不注意や手入れ不足によって発生・拡大した傷や汚れは、退去時に費用を請求される可能性があります。

学生の退去では、ベッドや机を動かしたときに初めて床のへこみや壁紙の変色に気づき、「すべて自分の負担になるのでは」と心配されるケースがあります。

しかし、室内に傷や変色があるだけで、直ちに入居者負担になるわけではありません。

この記事では、賃貸物件における通常損耗の考え方と、学生が負担しなくてよい傷・汚れの具体例を、不動産業界で約20年働いてきた経験をもとに分かりやすく解説します。

賃貸物件の「通常損耗」とは?

通常損耗とは、入居者が一般的な住み方をしていても、通常の使用によって発生すると考えられる傷や汚れのことです。

例えば、家具を長期間置いたことによる床のへこみや、冷蔵庫を設置した壁面にできる黒ずみなどが該当します。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を次のように考えています。

入居者の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用によって発生した損耗や毀損を復旧すること

つまり、原状回復とは、部屋を入居したときとまったく同じ状態に戻すことではありません。

通常の使用による損耗や、時間の経過による劣化の修繕費用は、原則として毎月の家賃に含まれていると考えられています。

原状回復の基本的な考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

▶【関連記事:原状回復ガイドラインとは?学生にも分かりやすく解説】

通常損耗と入居者負担の早見表

学生の一人暮らしで発生しやすい傷や汚れについて、一般的な費用負担の考え方をまとめました。

傷・汚れの例原則的な負担
家具を置いた床やカーペットのへこみ貸主
日光による壁紙や床の変色貸主
冷蔵庫やテレビの後ろの黒ずみ貸主
画びょうやピンによる小さな穴貸主
畳の日焼けや自然な変色貸主
引越し作業や家具移動で付けた傷入居者
飲み物をこぼして放置したシミ入居者
手入れ不足によって拡大したカビ入居者
くぎやネジによる大きな壁の穴入居者
室内喫煙によるヤニ汚れや臭い入居者
ペットによる傷や臭い入居者
どちらの負担?
通常損耗と入居者負担の違い
傷や汚れの原因、管理状況、契約内容によって、実際の費用負担は異なります。

ただし、実際の費用負担は、傷や汚れが発生した原因、入居後の管理状況、経過年数、賃貸借契約書の内容などによって異なります。

この表だけで判断せず、退去時には契約内容や請求の内訳も確認しましょう。

通常損耗と経年劣化の違い

通常損耗と似た言葉に「経年劣化」があります。

それぞれの違いは、次のとおりです。

分類意味具体例
通常損耗普通に生活することで発生する傷や汚れ家具を置いた床のへこみ、家電裏の黒ずみ
経年劣化時間の経過や自然現象によって発生する劣化壁紙の日焼け、設備の自然な劣化
入居者の故意・過失不注意や通常とはいえない使い方による損傷放置した飲み物のシミ、家具移動時の傷

通常損耗は「生活することで生じる変化」、経年劣化は「年月がたつことで生じる変化」と考えると分かりやすいでしょう。

どちらも、原則として入居者が修繕費を負担するものではありません。

ただし、同じように見える傷や汚れでも、発生した原因や入居後の対応によって判断が変わります。

壁紙や設備の経年劣化、耐用年数については、今後別の記事で詳しく解説します。

学生が負担しなくてよい傷・汚れの具体例

ここからは、国土交通省のガイドラインをもとに、一般的に通常損耗や経年劣化として扱われる傷や汚れを紹介します。

家具を動かして床や壁を確認する学生のイラスト
家具の設置による床のへこみや、日光による自然な変色は、原則として入居者負担ではありません。

家具を置いたことによる床やカーペットのへこみ

ベッド、机、本棚、冷蔵庫などを長期間置いていると、その重さによって床やカーペットにへこみや設置跡が残ることがあります。

家具や家電を置くことは、日常生活を送るうえで必要な行為です。そのため、一般的な家具の設置によるへこみは、通常損耗として扱われるのが基本です。

東北大学生の場合、4年間だけでなく、大学院への進学や医・歯系学部への在籍によって、同じ部屋に6年以上住むこともあります。

入居期間が長くなるほど、ベッドや机などの設置跡が残りやすくなりますが、長期間住んだという理由だけで入居者負担になるわけではありません。

ただし、家具を移動するときに床を引きずり、大きな傷を付けた場合は、入居者の不注意による損傷と判断される可能性があります。

テレビや冷蔵庫の後ろにできた壁の黒ずみ

テレビや冷蔵庫などを壁の近くに置いていると、壁紙に黒っぽい跡が付くことがあります。

これは、家電製品から発生する熱や静電気によって、壁面にほこりが付着することなどが原因です。

冷蔵庫やテレビは一般的な生活に必要な家電であるため、通常の使用によって生じた黒ずみは、原則として通常損耗と考えられます。

ただし、汚れに気づきながら長期間放置し、通常の清掃では落とせない状態まで悪化させた場合は、入居後の管理状況が問題になることがあります。

定期的に家電の周囲を掃除しておきましょう。

日光による壁紙や床の変色

窓から入る日光によって、壁紙やフローリングの色が薄くなったり、一部が変色したりすることがあります。

日光による自然な色あせや変色は、時間の経過に伴って発生する経年劣化です。通常の生活をしていても避けることが難しいため、原則として貸主側の負担と考えられます。

家具を置いていた部分と、それ以外の部分で床や壁紙の色に差ができることもありますが、日光による自然な変色であれば、通常は入居者の責任ではありません。

画びょうやピンによる小さな穴

カレンダーやポスターを飾るために使用した画びょうやピンの小さな穴は、一般的な生活の範囲内として、通常損耗と扱われることがあります。

ただし、すべての壁の穴が通常損耗になるわけではありません。

くぎやネジを使って下地部分まで達するような大きな穴を開けた場合や、同じ場所へ多数の穴を開けた場合は、入居者負担になる可能性があります。

賃貸物件でポスターや写真を飾る場合は、壁への穴が目立ちにくい細いピンや、賃貸住宅向けの用品を選びましょう。

使用する前に、賃貸借契約書や管理会社から渡された注意事項を確認することも大切です。

賃貸物件でポスターやカレンダーを飾る場合は、通常の画びょうよりも穴が目立ちにくい、賃貸住宅向けの細いピンを選ぶと安心です。


ただし、壁の材質や契約内容によって使用できる用品は異なります。使用前に賃貸借契約書や管理会社からの注意事項を確認しましょう。

エアコン設置による壁の穴や設置跡

通常の生活に必要なエアコンを設置したことによるビス穴や設置跡は、通常損耗として扱われることがあります。

ただし、物件によっては、エアコンの追加設置に貸主や管理会社の承諾が必要です。

指定された場所以外に穴を開けたり、無断で設備を取り付けたりすると、退去時に修繕費を請求される可能性があります。

エアコンを新しく設置する場合は、工事を依頼する前に管理会社へ確認しましょう。

日常生活で生じた床の軽微な擦れ

室内を歩くことや日常生活によって発生した床の軽い擦れは、通常損耗として扱われる場合があります。

一方、キャスター付きの椅子を繰り返し使用して床を傷つけた場合や、家具を引きずって深い傷を付けた場合は、入居者負担と判断されることがあります。

学生の一人暮らしでは、勉強机の前でキャスター付きの椅子を使うことも少なくありません。

フローリングの上でキャスター付きの椅子を使用する場合は、床の傷や擦れを防ぐためにチェアマットを敷いておくと安心です。透明タイプや床になじむ色を選べば、1Kの室内でも圧迫感を抑えられます。


購入前に、机と椅子を動かす範囲を測り、床暖房への対応や滑り止めの有無も確認しましょう。

畳の日焼けや自然な変色

窓から入る日光によって畳の色が変わることは、自然な経年劣化に当たります。

通常の生活によって畳表が少しずつ擦れたり、色が変わったりした場合も、原則として入居者が交換費用を負担するものではありません。

ただし、飲み物をこぼしてシミを残した場合や、家具を引きずって傷つけた場合などは、入居者負担になる可能性があります。

通常損耗と間違えやすい入居者負担の例

退去時の費用負担は、傷や汚れの見た目だけでなく、発生した原因や、その後の対応によって判断されます。

次のようなものは、通常損耗ではなく入居者負担になる可能性があります。

飲み物をこぼして放置したシミ

飲み物をこぼすこと自体は、日常生活で起こり得ます。

しかし、その後に拭き取らず、床やカーペットへシミやカビが残った場合は、入居者の手入れ不足と判断されることがあります。

飲み物や調味料をこぼしたときは、できるだけ早く拭き取りましょう。

結露を放置して発生・拡大したカビ

仙台の冬は外気温が低く、室内と屋外の温度差によって窓や壁に結露が発生することがあります。

結露そのものは、建物の構造や気候の影響も受けるため、すべてが入居者の責任になるわけではありません。

ただし、結露に気づきながら拭き取らず、換気もしないまま放置したことで、カビや壁紙の損傷が拡大した場合は注意が必要です。

冬は定期的に換気を行い、窓に付いた水滴を拭き取りましょう。

漏水や設備の不具合が疑われる場合や、自分で対処できない状態を見つけた場合は、写真を撮ったうえで早めに管理会社へ連絡してください。

仙台の冬に結露を拭き取る学生のイラスト
仙台の冬は結露が発生することがあります。水滴を拭き取り、換気を行うことでカビの発生や拡大を防ぎましょう。

引越しや家具移動で付けた傷

家具や家電を搬入・搬出するときに、壁や床、ドアなどへ付けた傷は、通常損耗とは扱われないのが一般的です。

特に、ベッド、本棚、冷蔵庫などの大型家具・家電を動かす際は注意が必要です。

東北大学の卒業時期に当たる3月は、引越しが集中します。限られた時間のなかで急いで運び出すと、壁や床を傷つける可能性が高くなります。

家具や家電を運び出す前に、床や壁、ドア周辺を養生しておくと傷を防ぎやすくなります。

くぎやネジによる大きな壁の穴

画びょう程度の小さな穴とは異なり、くぎやネジによって壁の下地まで傷つけた場合は、入居者負担になる可能性があります。

壁掛け棚や大型テレビなどを取り付けたい場合は、自分で判断せず、事前に管理会社へ相談しましょう。

喫煙による壁紙の変色や臭い

室内での喫煙によって壁紙が黄ばんだり、臭いが染み付いたりした場合は、通常の使用を超える損耗として扱われるのが一般的です。

壁紙の張り替えだけでなく、消臭作業などが必要になることもあります。

また、契約書に室内禁煙の特約が設けられている場合は、その内容も確認が必要です。

ペットによる傷や臭い

ペットが柱や壁紙を引っかいた傷、室内に残った臭い、排泄物によるシミなどは、通常損耗には含まれないのが一般的です。

ペット飼育可の物件であっても、ペットによる傷や汚れの修繕費が免除されるわけではありません。

ペット飼育に関する特約が定められている場合もあるため、契約内容を確認しておきましょう。

通常損耗でも特約によって費用負担が決まる場合がある

通常損耗や経年劣化の修繕費は、原則として貸主側が負担します。

ただし、賃貸借契約書に「退去時のハウスクリーニング費用は入居者負担」などの特約が定められていることがあります。

国土交通省のガイドラインは、原状回復の費用負担を考えるうえで重要な基準ですが、実際の退去時には賃貸借契約書の確認も必要です。

もっとも、契約書に書かれていれば、どのような特約でも必ず有効になるとは限りません。

特約の内容が明確であるか、入居者が内容を理解して合意しているか、負担する費用や範囲が具体的に示されているかなども判断材料になります。

契約時や更新時には、次の項目を確認しておきましょう。

  • ハウスクリーニング費用
  • エアコンクリーニング費用
  • 鍵交換費用
  • 畳やふすまの交換費用
  • 短期解約違約金
  • ペット飼育や喫煙に関する費用
  • その他の原状回復特約

敷金から差し引かれる費用については、以下の記事も参考にしてください。

【内部リンク:賃貸物件の退去時の敷金精算の考え方とは?】

【内部リンク:東北大学生の賃貸契約|敷金とは?返金の仕組みと退去時の注意点】

入居時の写真が退去時のトラブル防止につながる

傷や汚れが通常損耗かどうか以前に、「その傷が入居前からあったのか、入居後に付いたのか」が問題になることがあります。

入居したら、荷物を運び込む前に室内の状態を確認し、気になる箇所を写真や動画で記録しておきましょう。

特に確認したい場所は次のとおりです。

  • 壁紙の汚れやはがれ
  • 床やフローリングの傷
  • 建具や扉のへこみ
  • キッチンや洗面台の汚れ
  • 浴室や窓周辺のカビ
  • エアコンや設備の不具合
  • 網戸やガラスの破損

写真は部屋全体の位置関係が分かるものと、傷や汚れを近くから撮影したものの両方を残しておくと安心です。

撮影日が確認できる状態で保存し、必要に応じて管理会社へ報告してください。入居時確認書が渡された場合は、記入したうえで期限内に提出しましょう。

退去時に修繕費を請求されたら確認すること

通常損耗と思われる傷や汚れについて修繕費を請求された場合は、次の内容を確認しましょう。

  1. どの傷や汚れが請求の対象になっているか
  2. 通常損耗ではないと判断された理由
  3. 修繕する範囲と施工単位
  4. 使用年数や経過年数が考慮されているか
  5. 賃貸借契約書に関係する特約があるか
  6. 見積書や精算書に詳しい内訳が記載されているか

入居者に責任のある傷であっても、必ず新品への交換費用を全額負担するとは限りません。

国土交通省のガイドラインでは、入居者負担になる場合でも、建物や設備の経過年数を考慮し、可能な限り損傷部分に限定した施工単位を基本としています。

その場で判断できない場合は、傷や汚れの箇所を写真に残し、管理会社へ請求の理由や費用の内訳を確認しましょう。

原状回復費用を判断するときの関連記事

通常損耗に該当するか判断するときは、傷や汚れの原因、入居期間、使用状況、修繕範囲などを確認します。経年劣化との違いや原状回復の基本を確認したうえで、壁紙や床など請求された箇所ごとに考えることが大切です。

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まとめ|普通に生活してできた傷は原則として入居者負担ではない

通常損耗とは、入居者が一般的な住み方をしていても、通常の使用によって発生する傷や汚れのことです。

家具を置いたことによる床のへこみ、家電裏の黒ずみ、日光による壁紙の変色などは、原則として入居者が修繕費を負担するものではありません。

一方、次のような傷や汚れは入居者負担になる可能性があります。

  • 飲み物をこぼした後に放置したシミ
  • 手入れ不足によって拡大したカビ
  • 家具を引きずって付けた傷
  • くぎやネジによる大きな壁の穴
  • 喫煙やペットによる汚れ・臭い

大切なのは、傷や汚れを一切発生させないことではなく、日頃から適切に手入れを行い、問題を見つけたら早めに管理会社へ相談することです。

また、入居時に室内の写真を残し、賃貸借契約書の原状回復特約を確認しておくことで、退去時のトラブルを防ぎやすくなります。

通常損耗と入居者の故意・過失の違いを理解し、納得できる敷金精算につなげましょう。

参考資料

国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

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